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部は防波堤本体及び防波堤天端部に潜堤+遊水部+導入用のパイプを一体的に設けている。導水部はL字型の塩ビパイプ管(直径7。5cm)である。潜堤上で来襲波を砕波させ、遊水部に越流水を貯留して遊水部と港内側との水位差によって港内側へ港外側の水を導入する仕組みになっている。斜面部は堤体全体からの反射波を小さくし、波浪を有効に利用するためであり、潜堤はかなり小さな波浪でも砕波させ、遊水部の水位上昇、堤体後部への作用波力の減衰及び導入水の曝気を促進するためである。このような構造としたのは、夏場の通常時でも港内側の海水浄化にとって有意な導水量を確保するためである。
想定縮尺は1/30であり、海水交流工の設置水深は現地換算で20mである。実験諸元を表1に示す。導水効率は潮位と潜堤天端高さの相対的関係に密接に影響されるため、実験対象潮位を潜堤天端高、潜堤天端島±1.5mの3種類とした。実験波は周期5.6〜15.8秒の問で10種類、堤体直前での進行波の波高を0.9〜4.5mとした。水位変動は沖側水平床部に2本の容量式波高計(入・反射波分離用)、海水交流工直前、遊水部及び海水交流工背後に容量式波高計を設置し計測した。導水流速は導水部の流出口で電磁流速計を用いて計測した(図1参照)なお、堤体設置水深における進行波としての波高は、あらかじめ堤体の無い状態で各潮位毎に詳細に計測している。この結果と本実験で分離された沖側入射波から入射波高を推定した。

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3. 実験結果
(1)水位変動、導水孔の流速の時系列変化
図3、4に沖側、遊水部、海水交流工背後の水位変化及び導水孔の流速の時系列の例を示す。図3は入射波高が16?程度で、図4が7.0?程度である。各図中のa, b, cは、それぞれ潮位が潜堤天端高さ-5.0?、O?、+5.0cmの場合である。波高が大きい場合(図3)、遊水部での水位上昇が明瞭である。波高が小さい場合(図4)でも、潮位が潜堤高より高い(a)或は潜堤高さ程度(b)の場合では同様であるが、潮位が低い(c)場合では遊水部の水位は矩形状に変動している。潮位が低く波高が小さい場合潜堤を波が超波する場合のみ水位変動が起こることがわかる。

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図3. 水位及び導水流速の時系列波形(周期2.2秒、波高約16.0cm)

Fig3. Time series of water elevation and velocity

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図4. 水位及び導水流速の時系列波形(周期2.2秒、波高約6.5cm)

Fig4.Time series of water elevation and velocily

遊水部の水位変動と導水孔の流速は若干の位相差が見られるものの良く対応していることがわかる。また、波高が大きい場合、流速変動には高周波の乱れ成分が現れている。特に潮位が低い場合(c)は乱れ成分が大きく、潜堤を越波した水塊が遊水部に落下することによって生ずるものと考えられる。全実験ケースから導水孔での逆流は生じなかった。
海水交流工背後の水位変動は極めて小さく、伝達波高は小さいことがわかる。伝達波高が明瞭に現れるのは海水交流工の背後の壁を越波したときであることを日視観測で確認している。
(2)遊水部の水位上昇量、平均導水流速
前述のデータを用いて入射波高、遊水部の平均水位上昇量及び平均導水流速の関係を見てみる。図5(a),(b)、(c)に入射波高と平均水位上昇量の関係を示す。この図から次のことが言えよう。潮位が潜堤天端+5。0?(a)の場合、他と比較して周期に対する依存性がうかがえ、周期が長いほど平均水位の上昇量が大きくなるようである。これは、潜堤周辺で砕波するかしないか或は砕波形態が影響していることによると考えられるしかし、その傾向はそれほど顕著ではない。一方、潮位

 

 

 

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